ストレスチェック制度とは?対象者・実施方法・結果の見方と50人未満の義務化|産業医explorer

ストレスチェック制度とは?対象者・実施方法・結果の見方と50人未満の義務化

記事(全体向け)

2026年9月7日

人事・総務・安全衛生担当者の実務ガイド

結果を、相談につなぐ。
職場の改善につなぐ。

ストレスチェックは、心の不調を未然に防ぐための制度です。対象者・実施手順・結果の見方から、医師面接と職場改善までを整理します。

常時50人以上の事業場は、1年以内ごとに1回の実施が義務。50人未満も2028年4月1日から義務化されます。

01 / 実務ガイド

ストレスチェック制度とは|目的と義務化の対象

制度の中心は、病気の診断や「不調者探し」ではなく、メンタルヘルス不調を防ぐ一次予防です。従業員が自分の状態を把握し、会社が職場の負担を見直すために使います。実施しただけで離職や休職が減ると断定できるものではなく、必要な相談や働き方の改善までつなげることが重要です。

現在

50人以上は実施義務

常時50人以上の労働者を使用する事業場では、対象者に対し1年以内ごとに1回、定期に実施します。50人未満は義務化の施行前まで努力義務です。

2027年4月1日

集団分析の方法を明文化

特定の個人を識別できない方法で集計・分析することが、省令上明確になります。従来のプライバシー保護の考え方を明文化する改正です。

2028年4月1日

50人未満にも義務化

小規模事業場にも実施義務が広がります。従業員が少ない職場ほど、誰が個人結果を扱い、どこで医師面接を受けるかを先に決めておきましょう。

会社に求められる実施義務対象者への検査、本人への結果通知、対象者から申出があった場合の医師面接、その後の医師の意見聴取と必要な就業上の措置など。
集団分析・職場環境改善努力義務検査結果を集団ごとに分析し、その結果を踏まえて心理的な負担を軽減するよう努めます。
従業員の受検従業員に法的な受検義務はありません。会社の実施義務とは別です。受検や結果提供への同意を強制する運用にはしません。

02 / 実務ガイド

対象者の決め方|「50人」と受検対象者は別

「50人以上かどうか」と「誰を法定の受検対象者にするか」は、判定する基準が異なります。まず事業場の規模を確認し、その後に一人ひとりの雇用条件を確認すると整理しやすくなります。

判定 A

事業場の規模を数える

会社全体の合計ではなく、支店・工場・店舗などの事業場単位で確認します。常態として使用しているパート・アルバイト等も含めます。派遣労働者は派遣元・派遣先双方の規模判定で考慮します。

判定 B

実際の受検対象者を決める

法定の対象は、下記の「雇用期間」と「労働時間」の要件を両方満たす労働者です。正社員・パートなどの名称だけで対象/対象外を決めません。

法定の受検対象は、次の2要件を両方満たす人

① 雇用期間期間の定めのない契約、1年以上の有期契約、または契約更新により1年以上雇用される予定・実績があること。
② 労働時間1週間の労働時間が、同じ事業場で同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間の4分の3以上であること。

①の雇用期間の要件を満たし、労働時間がおおむね2分の1以上・4分の3未満の短時間労働者にも、実施することが望ましいとされています。

派遣・テレワーク・休業中の人はどう扱う?

派遣労働者個人への法定ストレスチェックと面接指導は、原則として派遣元の責任です。派遣先での職場環境改善・集団分析は、派遣元と情報の扱いを調整して進めます。
テレワーク勤務者在宅勤務であることだけで対象外にはなりません。所属する事業場で雇用条件を確認します。事業場の区分が分かりにくい場合は、組織・指揮命令の実態を踏まえて確認します。
長期休業・出張実施期間を通じて休業している労働者は、対象外として差し支えないとされています。一方、出張でその時期に受けられなかった人には、別途受検の機会を設けます。
役員・出向者役員は労働者性の有無、在籍出向者は雇用関係・指揮命令等の実態で判断します。派遣と同じ取扱いだと一律に決めないことが大切です。

03 / 実務ガイド

実施体制|実施者・事務担当・面接指導医の役割

会社の担当者だけで調査票を配布・集計しても、法定のストレスチェックを実施したことにはなりません。制度の責任者、検査の実施者、個人情報を扱う事務担当、面接指導を行う医師を分けて考えます。

事業者・社内の実務担当会社は実施責任を負い、予算・契約・日程・対象者名簿・社内周知を整えます。実務担当者が連絡調整を担うことと、個人結果にアクセスすることは別です。
ストレスチェック実施者医師・保健師、または所定の研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師で、法令の要件を満たす者。調査票・判定方法への助言、高ストレス者の選定、面接指導の要否の判断などを担います。
実施事務従事者実施者の指示のもとで、回答の入力、結果の通知・保存等を補助します。業務上必要な範囲にアクセス権限を絞り、守秘義務を徹底します。
面接指導を行う医師法定の面接指導を実施し、勤務状況や健康状態を確認して、就業上の措置について意見を述べます。検査の実施者と同じ人である必要はありません。

実施者資格には、制度開始前の実務経験に関する看護師・精神保健福祉士の経過措置があります。個別の資格要件は委託先・本人に確認してください。

産業医が選任されている事業場では、日頃の業務や健康課題を踏まえた助言を得られるよう、計画段階から連携しましょう。外部委託する場合も、検査後の医師面接と職場改善が誰の担当かを契約前に確認します。

04 / 実務ガイド

ストレスチェックの実施方法と年間の流れ

最初に決めたいのは、受検開始日だけではありません。面接指導の依頼先と、実施後の報告・改善までを含む年間計画をつくります。以下は、制度上必要な手続を実務で整理するための進め方です。

  1. 方針・実施時期を決める

    事業者が制度の目的を示し、対象者、調査票、実施方法、結果の利用範囲を検討します。50人以上の事業場では衛生委員会等で調査審議し、50人未満でも関係労働者の意見を聴きます。

    用意するもの:実施方針、年間日程、審議・意見聴取の記録

  2. 担当者・委託範囲を確定する

    実施者、実施事務従事者、社内窓口、面接指導医を決めます。調査票の集計だけでなく、面接の予約、医師の意見書、相談対応の担当まで確認します。

    用意するもの:役割分担表、委託契約、医師面接の依頼先

  3. 規程・対象者名簿・案内を整える

    個人情報、受検状況の扱い、本人同意、面接申出、保存・相談窓口を社内ルールにします。雇用期間と労働時間から対象者を確認し、案内の誤送信を防ぎます。

    用意するもの:実施規程、対象者名簿、受検案内

  4. 調査票を配布し、回答の機会を確保する

    紙・Web等で実施し、周囲に回答が見られない環境を用意します。未受検者には目的と秘密保持を説明して勧奨し、回答や同意を強制しません。

    用意するもの:配布・回収方法、受検期間、問い合わせ窓口

  5. 本人へ結果を通知する

    実施者から各本人へ、結果が出た後速やかに通知します。高ストレス該当の有無や面接指導の要否を含め、相談先と申出方法を分かりやすく案内します。

    用意するもの:本人宛ての結果、セルフケア情報、面接案内

  6. 医師面接と、その後の措置を行う

    対象者から申出があれば、会社が医師面接を実施します。医師の意見を聴き、必要に応じて業務量、労働時間、配置などを調整し、その後の状況を確認します。

    用意するもの:面接記録、医師の意見、就業上の措置・再確認の記録

  7. 集団分析から改善を一つ決める

    個人を特定できない単位で集計・分析し、仕事量や支援の状況を確認します。数値だけで部署を評価せず、現場の意見も踏まえて改善内容、担当者、確認時期を決めます。

    用意するもの:集団分析結果、具体的な改善計画

  8. 記録を保存し、実施状況を報告する

    記録の種類ごとに保存先・権限を確認します。常時50人以上の事業場は、定めた報告時期に所轄労働基準監督署へ実施状況を報告し、翌回の計画を見直します。

    用意するもの:必要な保存記録、結果等報告書、翌回への改善事項

紙・Web・ファイル形式は、回答環境と情報管理で選ぶ

紙で実施社用端末がない職場でも回答しやすい方法です。回答済みの調査票を密封して実施者側へ渡すなど、上司や社内担当者が内容を見ない回収方法を決めます。
Webで実施配布・集計の手間を減らしやすい一方、スマートフォン対応、本人確認、権限設定、共有端末での表示やログアウトを確認します。
Excel等のファイル法定の要件と情報保護を満たす運用が必要です。通常のメール添付や共有フォルダへの回収を安易に選ばず、送受信先、アクセス権、誤送信対策を検討します。

調査票は、厚生労働省が推奨する職業性ストレス簡易調査票(57項目)を基本に検討すると進めやすくなります。23項目の簡略版や追加項目を含む調査票を使う場合も、法定の3領域を含め、実施者と評価方法を確認してください。項目数が多いだけで優れた調査になるわけではありません。

05 / 実務ガイド

結果の見方と高ストレス者の判定基準

個人結果を読むときは、高ストレスに該当したかどうかだけでなく、何が負担で、どのような心身の反応があり、どれほど支援を得られているかを見ます。グラフの内側・外側や点数の高低が何を意味するかは、利用する結果票の説明を確認してください。

A|仕事のストレス要因57項目版では17項目。仕事量、裁量、職場環境など、負担の背景となる状況を確認します。
B|心身のストレス反応29項目。活気、疲労、いらいら、不安、気分の落ち込み、身体の不調などの状態を確認します。
C|周囲のサポート9項目。上司・同僚・家族や友人からの支援の状況を確認します。

57項目版には、上記55項目に加え、D領域「仕事や生活の満足度」の2項目があります。以下の標準的な高ストレス者選定例では、A・B・Cを用います。

高ストレス者の判定基準|57項目版の標準的な例

厚生労働省のマニュアルに示された合計点方式では、次のどちらか一方に該当する場合が高ストレス者の選定例です。「両方に該当しなければならない」ではありません。

基準 1

Bの合計が77点以上

心身のストレス反応が著しく高い場合。

または、基準 2

Bが63点以上、かつ
A+Cが76点以上

心身の反応が一定以上で、仕事の要因・周囲の支援の状況も著しく悪い場合。

ただし、回答欄の数字をそのまま足す方法ではありません。一部の質問は点数の向きを逆にする処理(逆転処理)が必要です。調査票・評価方法によって基準は異なるため、正式な判定は実施者が行い、会社が本人の回答を集めて独自に判定する運用にはしません。

素点換算表を使う方式は、点数の向きが逆

回答を尺度ごとの5段階評価に換算する方式では、原則として評価点が低いほどストレスの状態が悪いと読みます。標準的な選定例は、Bの6尺度の合計が12点以下、または「Bの6尺度の合計が17点以下、かつA・Cの12尺度の合計が26点以下」です。合計点方式の77点・63点・76点と混ぜて使わないでください。

06 / 実務ガイド

高ストレス者への対応|医師面接から就業上の措置へ

高ストレス者のうち、実施者が面接指導を受ける必要があると認めた人から申出があった場合、会社は医師による面接指導を実施します。カウンセラーや保健師の相談は有用な支援ですが、それだけで法定の医師面接に置き換えることはできません。

本人への通知・申出結果通知を受けた後、本人が会社へ遅滞なく申出を行います。通達ではおおむね1か月以内という取扱いです。申出方法と窓口をあらかじめ案内します。
会社による面接の実施申出を受けて遅滞なく、通達では申出後おおむね1か月以内に実施します。日程が確保できるよう、依頼先を受検開始前に決めておきます。
医師の意見聴取会社は面接後、遅滞なく医師の意見を聴取します。遅くとも面接からおおむね1か月以内、緊急に措置が必要なら可能な限り速やかに対応する取扱いです。
就業上の措置・再確認医師の意見を踏まえ、必要に応じて業務負担の調整、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少、配置の変更などを検討します。本人の意向も聴き、実施後の状況を確認します。

面接前に会社が用意する情報

労働時間・残業の状況、実際の担当業務、勤務形態、職場環境など、医師の判断に必要な情報を整理します。一方、ストレスチェックの個人結果や詳しい健康情報は、定めた同意・情報管理の手続に沿って扱います。

申出が目安の期間を過ぎた場合も、機械的に断るのではなく、実施者と健康状態や必要な対応を確認します。これは支援につなぐための実務上の勧めです。

本人が申し出ない場合も、相談できる道は残す

面接を申し出ない人に、申出を強制したり、人事評価への影響を示唆したりしないでください。実施者から制度や秘密保持を説明し、産業保健スタッフへの相談、社外相談窓口なども案内します。会社が申出前の高ストレス者一覧を当然に把握できるわけではありません。

07 / 実務ガイド

個人結果は会社に知られる?同意と情報管理のルール

従業員が安心して回答できるかどうかは、制度の説明だけでなく、実際の情報管理で決まります。「会社に見える情報」と「本人同意なしには受け取れない情報」を分けて周知しましょう。

受検したかどうか受検勧奨などのため、定めた運用に沿って会社が把握することは可能です。ただし、受検状況と個人結果の閲覧権限を混同しないようにします。
個人の回答・検査結果本人へ直接通知します。実施者や必要な実施事務従事者が扱いますが、本人の同意なしに会社へ提供することはできません。同意は原則として本人が結果を知った後に確認します。
法定面接の申出会社が面接を手配するため、申出者であることは会社に分かります。匿名の社外相談とは異なり、結果提供の扱いも事前に説明する必要があります。
面接後の医師の意見会社が就業上の措置を行うために必要な範囲に限定します。診断名や詳細な訴えなどを、面接で話した内容ごと広く社内に伝える仕組みではありません。
集団分析の結果個人が特定されない形で、職場改善のために会社が活用します。少人数の切り分けや自由記述の扱いによって本人が推測されないかにも注意します。

「面接を申し出る=必ず全結果を会社へ渡す」とは限らない

通達では、あらかじめ従業員に周知したうえで、面接を申し出た人を結果提供に同意したものとして扱うことが認められています。一方、衛生委員会等での調査審議を経て、会社が実施者へ「面接対象の要件に該当するか」を確認するなど、個人結果そのものを提供させない方法を定めることも可能です。

自社がどちらの方法を採るのか、何が会社に伝わるのかを、面接申出の案内と社内規程に一致させてください。「申出をすると必ず会社に全結果が自動で渡る」「会社には一切何も分からない」という両極端な説明は避けます。

08 / 実務ガイド

集団分析の読み方と職場環境改善へのつなげ方

集団分析は、個人を探すためではなく、職場に共通する負担を見つけるための取組です。集団分析と、その結果を踏まえた職場環境改善は努力義務ですが、検査を実施する意義を職場全体に還元する重要な段階です。

原則10人以上。実際に分析する人数で考える

集計・分析する単位は、原則として10人以上とします。10人未満でも、個人が特定されるおそれのない方法で実施できる場合はあります。厚生労働省は、全57項目の合計点の集団平均や「仕事のストレス判定図」を例示していますが、極端に少人数なら、これらの方法でも不適切です。

2027年4月1日からは、特定の個人を識別できない方法で集団分析することが省令上明確になります。これは、個人を特定しないという従来の考え方の明文化です。「全員が同意したから、個人が分かる集計でもよい」という設計にはせず、人数、属性の組合せ、集計方法を実施者と確認してください。

結果を読む順番は「負担・裁量・支援」から

仕事量が多いのか、自分で仕事を調整しにくいのか、上司・同僚の支援が届きにくいのかを確認します。前年と比べる場合は、同じ調査票・集計方法か、受検率や部署構成が変わっていないかも見ましょう。数値だけで原因や管理職の責任を断定せず、現場の話と照らし合わせます。

「仕事のストレス判定図」の健康リスクは、標準集団の平均を100とした相対的な指標です。例えば120という値は「従業員の120%が病気になる」という意味ではなく、その数値から個人の発病確率を直接読み取るものでもありません。

分析結果を、担当者と期限のある改善計画にする

以下は、実際の企業の実績ではなく、改善計画の立て方を示した例です。

結果・現場確認「仕事量の負担が大きい」という結果が出た場合、特定の時間帯への業務集中、承認待ち、急な差し込み業務がないかを確認します。
小さく試す改善例えば、朝に当日の優先順位を共有し、一定量を超える仕事はチーム内で再配分するルールを試します。気合やセルフケアだけを解決策にしません。
担当・確認する時期現場責任者と労務担当を窓口にし、例えば1か月後に運用状況を確認します。この期間は法定期限ではなく、改善を定着させるための設定例です。
見る指標残業の偏り、業務の滞留、相談のしやすさなどを確認します。翌年の結果だけを待たず、日々の運用に無理がないかを見直します。

改善の内容は「結果を受けて職場がどう変わったか」が分かる形で従業員に伝えます。個人の健康情報を出さずに対応を見せることが、次回も率直に回答しやすい運用につながります。

09 / 実務ガイド

記録の保存期間と労基署への報告方法

保存義務を整理するときは、「すべてのデータを会社が5年間保存する」と一括りにしないことが重要です。誰が受け取った、どの種類の記録なのかによって扱いが異なります。

同意を得て会社が受領した個人結果5年間の保存義務会社が記録を作成・保存します。閲覧できる人を限定し、目的外利用を防ぎます。
会社へ提供しない個人結果5年間の保存が望ましい実施者等による適切な記録・保存が行われるよう、会社は担当者、保存場所、期間、セキュリティなどの体制を整えます。会社が内容を閲覧してよいという意味ではありません。
医師の面接指導の記録5年間の保存義務実施日や医師の意見など、法令所定の事項を会社が記録・保存します。必要最小限の健康情報に限定します。
集団分析の結果5年間の保存が望ましい指針に沿って保存し、職場環境改善や経年比較に活用します。個人を識別できない状態を維持します。

労働基準監督署への報告|常時50人以上の事業場が対象

常時50人以上の労働者を使用する事業場は、1年以内ごとに1回、定期に「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」を所轄労働基準監督署へ提出します。全国一律に「年度末まで」と決められているのではなく、事業場ごとに報告時期を設定します。面接が終わるまで無期限に報告を先送りする運用にはしません。

現行様式は様式第6号の3です。在籍労働者数、検査を受けた労働者数、法定の面接指導を受けた労働者数、集団分析の実施の有無などを報告します。高ストレス者数そのものや、個人の点数・氏名を報告する欄はありません。

2025年1月1日から、これらの報告は原則として電子申請が義務化されています。電子申請が困難な場合の当分の間の取扱いは、厚生労働省の案内で確認してください。過去のマニュアルに掲載された旧様式番号ではなく、提出時の現行様式を使用します。

10 / 実務ガイド

50人未満の義務化準備|外部委託・費用

50人未満の事業場は、2028年4月1日の義務化に向け、検査サービスの申込みだけでなく、相談・面接・情報管理まで含めて準備します。小規模事業場では人事担当者と経営者の距離が近いこともあるため、個人結果の扱いを特に明確にしておきましょう。

外部委託先は「検査の単価」より「対応範囲」で選ぶ

厚生労働省の小規模事業場向けマニュアルでは、プライバシー保護の観点から、原則として外部委託による実施を推奨しています。これは、外部委託そのものを一律に義務付ける規定とは区別します。選定時は、外部機関に「サービス内容事前説明書」の作成・説明を求め、標準サービスと追加料金を確認しましょう。

  • 実施者と面接指導医は確保されているか。高ストレス判定の通知だけで終了する契約ではないか。
  • 会社が個人結果を見ない運用にできるか。誰がアクセスし、どこに保存し、契約終了時にどう引き継ぐか。
  • 本人通知・申出・面接まで進められるか。医師面接の予約方法、対応時期、追加料金、意見書の範囲は明確か。
  • 少人数の集団分析を安全に扱えるか。小さな部署、属性の切り分け、自由記述で個人が推測されないか。
  • 会社と従業員の質問に対応してもらえるか。再通知、操作支援、分析結果の説明、職場改善の助言は料金に含まれるか。

費用は、検査・医師面接・分析を分けて確認する

比較する見積りは、「1人あたりの検査費用」だけでなく、初期設定、紙の印刷・郵送、医師面接、意見書、集団分析の説明、職場改善の支援など、必要な対応をそろえて確認します。サービス範囲の違う見積りを単価だけで比べないことが、実務上のポイントです。

法定のストレスチェックと医師面接の実施費用は会社が負担します。受検・面接に要した時間の賃金については労使で協議して定める取扱いですが、厚生労働省は会社が賃金を支払うことが望ましいとしています。

11 / 実務ガイド

受検率を高める周知文と、安心して答えられる運用

受検率を上げるために、回答を急かしたり「全員必須」と伝えたりするのは適切ではありません。目的、情報の扱い、困ったときの連絡先を具体的に伝えることを基本にします。以下は、実際の運用に合わせて使うための案内文の例です。

従業員向けの案内文例

今回のストレスチェックは、ご自身のストレスの状態に気付き、必要な相談や働きやすい職場づくりにつなげるために行います。病気の診断や人事評価のための検査ではありません。

個人の回答・結果は、実施者と必要な実施事務従事者が適切に管理し、本人の同意なく会社に提供しません。受検しないことや、結果提供に同意しないことを理由に、不利益な取扱いは行いません。

医師による面接指導が必要と判断された方には、申出方法を案内します。法定の面接を申し出る場合、会社が日程調整や必要な就業上の配慮を行うため、申出者であることは会社に伝わります。個人結果の提供方法や会社に伝える情報の範囲は、申出前に案内します。

回答で困ったことや、制度・個人情報の扱いに不明な点がある場合は、受検案内に記載した窓口へご相談ください。

文例は本記事で作成したものです。配布時には、実施期間、実施者・窓口、回答方法、面接申出時の結果提供ルールを、自社の確定した内容で追記してください。

「受けやすさ」と「実施後の変化」をつくる

実務上は、回答のための時間を確保する、共有端末でも周囲に内容が見えないようにする、外国語での案内が必要な人を確認する、といった準備が役立ちます。未受検者への通知は回答内容を収集しない担当者から行い、受検を強制する表現は使わないようにします。

実施後は、集団分析をもとに決めた業務上の改善を従業員へ伝えます。受検率や高ストレス者割合だけを「低いほど成功」「高いほど失敗」と評価するのではなく、相談しやすさや改善の実行状況も確認しましょう。

12 / 実務ガイド

ストレスチェックのよくある質問

実施前や結果通知のあとに、担当者から寄せられやすい疑問をまとめました。

50人未満の事業場は、いつから義務化されますか?

2028年4月1日からです。施行前は努力義務ですが、実施者、面接指導医、個人情報の扱い、予算を早めに決めておくと導入を進めやすくなります。

根拠・詳しい取扱い

従業員は、必ず受けなければなりませんか?

従業員に法的な受検義務はありません。会社は対象者に実施の機会を用意し、目的を説明して受検を勧めますが、未受検を理由に不利益な取扱いをしてはいけません。

根拠・詳しい取扱い

高ストレスと判定されたら、会社や上司に分かりますか?

本人同意なしに個人結果が会社へ提供されることはありません。ただし、法定の医師面接を申し出ると、申出者であることは会社が把握します。申出時の結果提供は、事前に周知された社内ルールを確認してください。

根拠・詳しい取扱い

高ストレスなら、面接や休職は強制ですか?

高ストレスの判定だけで休職が決まるわけではありません。法定の医師面接は対象者の申出を受けて行い、必要な就業上の措置は、医師の意見を踏まえて会社が検討します。

根拠・詳しい取扱い

医師面接が0人でも、労基署への報告は必要ですか?

常時50人以上の事業場では、法定の医師面接を受けた人がいなくても、ストレスチェックの実施状況を定期に報告します。検査や通常の健康相談の人数と、法定面接の人数を混同しないようにします。

根拠・詳しい取扱い

50人未満にも、労基署への報告義務が広がりますか?

現在公表されている取扱いでは、50人未満の事業場に検査結果等報告書の提出義務はありません。実施義務の拡大と、常時50人以上を対象とする報告義務は別です。施行前には最新の省令・様式も確認してください。

根拠・詳しい取扱い

部署が10人未満なら、全員の同意を取れば分析できますか?

同意だけを根拠に、個人が特定される集団分析をしてよいとは考えないでください。原則10人以上とし、小さい集団を扱う場合は、個人が特定されない集計方法や部署のまとめ方を実施者と検討します。

根拠・詳しい取扱い

13 / 実務ガイド

まとめ|実施前に確認したい5つのこと

ストレスチェックを役立つ制度にするには、回答を集める前に、「結果が出た後、誰が何をするか」を決めておくことが大切です。実施前の確認は、次の5点から始めてください。

  • 事業場の人数と、法定受検対象者を分けて確認した。
  • 実施者、実施事務従事者、社内窓口、面接指導医が決まっている。
  • 個人結果の閲覧範囲と、本人同意・面接申出のルールを説明できる。
  • 面接後の医師の意見聴取、必要な就業上の措置、集団分析後の改善を予定している。
  • 記録の保存先・期間と、必要な労基署報告の時期が決まっている。

外部の検査サービスを利用していても、面接や職場改善が別々になっていることがあります。日頃の業務を理解する産業医と、保健師・人事労務担当者が連携できるよう、検査の前後を含めた相談体制を整えましょう。

本記事は制度の一般的な解説です。個別の対象者・就業上の措置は実施者や産業医等に確認し、制度の改正・施行時には厚生労働省の最新情報をご確認ください。

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